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猫の代わりに人間を入れたら?「思考実験-科学が生まれるとき」のレビュー

 本書では思考実験について論じています。本書について感想を述べる前に、重要な概念である仮説演繹法について説明しようと思います。

 演繹法は真理や法則を用意し、それを論理的に具体的なものに当てはめます。真理や法則が真なら必ず真になります。

 帰納法は具体的なものから法則を導く思考法です。

 仮説演繹法はまず、具体的な事象から仮説を導きます(帰納法)。次に導き出し仮説から現象を予測します(演繹法)。現実の現象を観測し、予測された現象と一致するか確かめます。一致した場合は仮説についての信憑性が高まります。絶対に正しいわけではないので注意。一致しない場合は仮説は棄却されます。

 僕が面白いと思った思考実験を2つ紹介しようと思います。

 英雄テセウスミノタウロスを倒し帰還したときに乗っていた船。この船はアテネで飾られていたが、古くなっていたので部品を取り換えて修理することにした。いつしか交換した部品のほうが多くなり、いつしかもとからあった部品はなくなってしまった。今の船はテセウスが乗っていた船と言えるだろうか?

 この思考実験は同一性に関する問題です。皆さんはどう思いますか。同じ設計図からテセウス船を作ったとき同じ船と言えるのか?などバリエーションはいろいろあります。

 シュレティンガーの猫についての思考実験を見てみよう。これはミクロで成り立つ量子力学の確率解釈がマクロの物体にも適用されるのか考察するものです。

 箱の中に猫を入れる。放射性物質も一緒にいれ、α波が放出されるとハンマーが青酸ガスの入った瓶を割る。すると猫は死んでしまう。放射性物質が崩壊する確率は1時間で二分の一とする。コペンハーゲンの解釈によると観測するまで量子の状態は決まらない。ここであなたが箱を開けるまで猫は死んでいるのか生きているのか決まらない。

 これは量子の不確定さが放射性物質から、ハンマー、青酸ガス、猫とミクロなものに適用されることへの疑問を提起します。またこの問題のアレンジに無限退行の問題もあります。不思議ですね。

 難しい数式もなく根気よく読めば理解できました。読んでいて頭のストレッチになりました。他にも面白い思考実験があります。僕が印象に残ったのはマーミンの思考実験です。気になった方は読んでみてください。